鈴木 和敏さん(kamiken.)

小規模サロンでもハサミを置ける仕組みを確立した「kamiken.」代表の鈴木和敏さんは、2020年11月に再びハサミを持ち、以前からチャンスがあると感じていたメンズサロンを立ち上げました。そしてわずか2か月後に再び経営に専念する道を切り開いた鈴木さんの経営者としての理念と、美容業界への熱い想いをお聞きしました。

ライター 森永 泰恵 | カメラ 岡崎 累 | 配信日 2021.1.21

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「半個室・個室の小規模サロン」が成功の鍵

全てのサロンを半個室・個室にしようと思ったきっかけは何ですか。

kamiken.

25歳の時に僕1人で、13坪で2席のサロンを福島市に開業したのが「kamiken.」のスタート。1対1で対応してくれるのがいいというお客様が多かったんです。お客様が増えたのでスタッフを1人増やしたところ、僕が1人の時間帯を狙って来店される方がたくさんいることに気がついたんです。1対1だからいい、他に誰かいると居心地が悪いと感じる人がたくさんいるんだと思い、このまま事業を拡大するにはどうしたらよいかと考えた結果、仕切って半個室または個室化し、1対1で接客することにしました。

個室や半個室での1対1の接客だからこそ、美容師は、そのお客様のサロンでの体験が最高のものになることだけを考えて接客できますし、お客様も悩みを打ち明けやすくなります。エイジングケアに特化したメニューを充実させ、“美しい髪”を押し出すコンセプトにしたことも、経営を軌道に乗せる原動力になりました。コロナ禍となった今も、そのおかげでお客様が安心して来店してくださっているのだと思います。

自分が現場から離れてもサロンは回る

ハサミを置いて気づいたことは何ですか。

鈴木 和敏さん(kamiken.)

しだいにスタッフが増えて3店舗展開していた頃、僕はサロンワークをやりながら店舗の管理もしていたのですが、どんどん忙しくなり、その時、東日本大震災が起こって資金繰りが苦しくなってしまい…。結婚を控えていた僕は、ここで働き方を変えないと自分自身も家族も、スタッフも幸せにできないと思ったんです。このままサロンワークを続けながら経営をしても、何かあったらダメになってしまう、今こそ本気で経営と向き合おうと決意し、そこから3年くらいかけて経営を見直し、2015年にハサミを置きました。完全に現場から離れてみたところ、「仕組みさえちゃんとすれば、意外と余計なことを言わなくても回るんだな」と感じましたね。それまでは全部、自分でチェックして指導しないと絶対に回らないだろうと思っていましたが、数字的にはそれまで以上の成果が上がっていたのです。

今、メンズサロンは求められている

メンズサロンを立ち上げたそうですが、その狙いは何ですか。

ハサミを置いてからは経営コンサルタントとしての活動を開始しました。2018年には「脱・職人経営」(株式会社髪書房刊)も出させていただき、全国の美容経営者の方に自分の経験や知識を講演させていただいています。セミナーの中で経営者としてスタッフのために仕事をしましょうとお話ししているのですが、本当はハサミを置きたい、または現場メインの状態から離れたいけどなかなか任せられない、そんな声をよく耳にします。そんな方たちをたくさん見て、「こういう風にやればゼロからでもできるんだよ」という姿を僕自身が改めて見せたいと思ったんです。そこでメンズサロンに着目しました。以前からメンズサロンにチャンスがある、いつかはやってみたいという思いがあったのと、僕自身40歳を超えて抜け毛が気になるようになっていたこともあります。「何もかもゼロからもう一回やろう」をコンセプトに掲げ、これまでやったことのないメンズサロンでもう一度ハサミを持って現場に復帰し、再びハサミを置いて経営に専念するまでのストーリーを僕が体現することで、仕組みさえしっかりしていれば、ゼロからでもできることをお見せしたいと思ったんです。

kamiken.

男性スタッフの次のステージとしての意味も

メンズサロンの狙いは他にもあるのですか。

鈴木 和敏さん(kamiken.)

メンズサロンを立ち上げたのにはもう1つ別の意味もあります。今いる男性スタッフが年齢を重ねた時、若い女性を担当するよりもメンズサロンで力を発揮するほうがいいのではないかと感じているからです。まだ本人たちからそういった希望は聞いていませんが、いざそうなった時にメンズサロンを始めるより、今のうちから形をつくっておけばステージチェンジしやすいのではないかと思ったんです。スタッフは美容師ですから、メニューにはシェービングは入っていません。今でも「kamiken.」のお客様の約4割が男性客なので、男性への応対は慣れていますし、シェービングがなければ技術的にも問題がないので、メニューの内容を少し変えるだけで、基本的にはこれまでやってきた女性客向けの集客や宣伝と同じ手法で運営できるのではないかと思っています。

ステータス感を得られるメンズサロンをつくりたい

どのようなメンズサロンを目指したのですか。

kamiken.
kamiken.
kamiken.
kamiken.
kamiken.
kamiken.
kamiken.
kamiken.

メンズサロンをつくるにあたり、メンズサロンにいくつか行ってみました。その体験から改めて僕が思うメンズサロンの像を思い描くことができました。それは“ステータス感”を得られるサロンであるということです。店構えや内装、接客そして価格もステータスを感じるサロン。僕自身が「こういうお店があったらいいな」と思うようなお店をつくろうと思ったんです。たとえるなら看板のない高級なお寿司屋さんのようなお店で、自分に投資したいと考える大人の男性を顧客にしたいと思いました。そういう方たちはお金をしっかり払うことにステータスを感じる方が多いので、安売りしてはいけないとも思いましたね。


1カ月ちょっと前にプレオープンし、美容室経営者の方でメンズサロンに興味のある方に、僕が考えるビジネスモデルをお教えする機会を設けました。中には関西方面からわざわざ来てくれた方もいますが、皆さん、「マネさせていただきます」「これだったらうまくいくしかないですよね」「こういうのが本当の仕組みなのですね」と言ってとても喜んでくれました。僕自身もそれを聞いて手ごたえを感じましたね。

大人の男性に向けてメンズ美容を打ち出したい

メンズサロンのターゲット層やコンセプトを教えてください。

kamiken.

このメンズサロンは2席しかないこともあり、福島市内を商圏とするだけで成り立つと考えています。1席あたり月に80人しか対応できないので、スタッフが1人なら80人の顧客を抱えればいいという計算になります。それはそんなにハードルの高いことではないと思います。40代、50代で、老化をちょっと気にしている、ちょっと若く見せたい、そんな男性に来ていただきたいです。


先日「kamiken.」に来てくださっている女性のお客様のご主人がメンズサロンに来てくれて、3回分の予約を入れてくださいました。夫婦でご来店いただける場所(メンズサロンの上の階が既存の美容室)にするというのも考えていますし、一度ご来店さえしてもらえれば気に入っていただける自信はあります。まずはここに行きたいと思ってもらえるような発信をしなければいけませんので、チラシや自社のホームページを中心に告知していく予定です。今回のメンズサロンは美肌を軸としたメンズ美容がテーマなので、それもしっかり伝えていきたいです。

スタッフにずっと働いてもらえる「仕組み」

重要だと考えられている「仕組み」とは何でしょうか。

当初、オープンしてから1年以内にハサミを置いて再び経営に専念するという目標でスタートしたのですが、たまたまいい方と出会ってその方にお店を任せることにしたので、2021年1月からはまた経営に専念することになりました。せっかく刻印までしたハサミを新調したのですが、2カ月で終わってしまいました。顧客ゼロからのスタートでも、こういう風に会社の仕組みをつくって採用すれば任せられる、ハサミを置くことができるという姿を見せるには十分すぎる最速の引退でしたね(笑)。ゆくゆくはもう1人採用して2人体制でやっていこうと考えています。仕組みとは、メニューや集客方法などを会社でしっかり決め、構造的にこうすれば売上はこうなる、リピート率はこうなる、というシステムのことです。

これさえあれば、あとはふさわしい人材を見つけることです。今回のメンズサロンをお任せする方は全くの新規採用になりますが、たとえ新規採用の方であっても、僕の経営方針を理解し、同じ方向を向いていただける人であれば、一緒にやっていけると思っています。僕自身は、また別の新規プロジェクトを始めたらハサミを持つ日が来るかもしれません。そして軌道に乗ったらハサミを置いて別の方に任せる。全てはスタッフにずっと働いてもらえる会社にするために、僕自身の仕事はそのステージを作ることだと思っています。

刻印したハサミ

スタッフに頼ってもらえる会社にしたい

スタッフにずっと働いてもらえる会社をどう構築していますか。


ハサミを置いて経営と本気で向き合うようになった頃から「安心して頼ってもらえる会社にすれば、スタッフは辞めない」ということに気づいたんです。元々給料を多めに払ったり、他店でうまくいかなかった人に声をかけたりしていたこともありますが、そうすることで、スタッフは安心して会社に頼ってくれるようになり、ずっと働いてくれるのだということが分かりました。実際、うちの会社で辞めるスタッフはほとんどいません。「kamiken.」はそれなりに地域でのブランドや仕組みがありますので、僕自身の考えに共感してくれる人であれば、ある程度活躍してくれます。その反面、自分のこだわりが強すぎる人だと会社の強みに頼ってもらえず、ズレが生じるといった側面もあるのは事実ですね。

鈴木 和敏さん(kamiken.)

改めて経営に専念することの大切さを痛感

現場に戻ってみて、どのような感想を持ちましたか。

kamiken.の皆さん

わずか2カ月ではありますが、現場に戻ってみて感じたのは、サロンワークと経営者の両立の難しさです。サロンワークをすれば目の前のお客様のことを一番に考えないといけない、逆に経営者は目先の売上ではないことを考えなければなりません。僕は今回、お客様に久しぶりに対応してみて、お客様からダイレクトに喜ばれたり、やりがいを感じたりする素晴らしさを改めて感じました。


そして僕の仕事は、こんな素晴らしいことをしている美容師さんたちのために、経営者としてステージを用意していくことだと思ったんです。僕は元々、拡大志向ではないのですが、スタッフがずっと働き続けてくれるのでその人たちの次のステージをつくるために出店したりして、それで徐々に店舗やスタッフ数が増えていきました。今も特には求人募集をかけてはいないのですが、「ここで働きたい」という人が自然と来てくれるんです。そんなスタッフのために、ふさわしいステージを常に用意していきたいですね。

求人も集客も、もっと特化しなければいけない

選ばれるお店になるために、何が大切だと思いますか。

kamiken.

よく、求人募集をしても人が集まらない、すぐ辞めてしまう、人が育たない、そういう経営者の方の声を聞きますが、それは魅力がないからなのではないでしょうか。魅力というのは待遇なのかやりがいなのか、色々あると思いますが、世の中には美容室が星の数ほどあるので、働く側の人は美容室選びには困っていません。それはお客様も同じです。

求人も集客も、もっと特化して「うちは○○の専門店です」「うちはこういう美容師が働くサロンです」など、コンセプトを明確にしないと、美容師さんからもお客様からも選ばれないと思います。「kamiken.」は完全個別対応や半個室・個室化、“美しい髪”を売りにするなどの専門性を高めたことによって、うまく回っているのだと感じています。これからも「kamiken.」の専門性を高めていくことに注力していきたいと思っています。

kamiken.

情報発信を通じて、業界の価値を上げていきたい

今後、美容業界の中でどんなことをしていきたいですか。

鈴木 和敏さん(kamiken.)

美容と健康は人間が生きていく上での永遠のテーマです。1人の職人としても経営者としても美容は素晴らしい業界だと思っているのですが、業界の社会的価値が低いと感じているので、そこを上げていきたいという思いはあります。僕ができることは情報発信なので、8店舗運営していることを通じて「kamiken.」の強みを見せながら業界を盛り上げ、経営に悩んでいる方の何かヒントになれば幸いです。


僕は経営に専念するというポジションを取りましたが、チェーン展開をするとか、職人道を極めるとか、色々な立場があると思います。「道」や「ゴール」は自分で決めるものなので、それぞれの分野で自分らしさを忘れずに取り組んでいただくことで、この業界が盛り上がればいいなと考えています。

鈴木 和敏さん(kamiken.)

鈴木 和敏さん

1979年、福島県生まれ。都内1店舗、福島県内1店舗を経て2005年、福島市で1人で開業。現在、福島県内に8店舗を展開中。経営コンサルタントとして全国でセミナーを行う他、雑誌等でも活躍中。


http://kazutoshi-suzuki.com

kamiken.

kamiken.

完全個別対応、全室半個室または個室で、ケアを中心としたセットメニューを提案し、高単価・高リピート率を実現。2020年にメンズ美容を打ち出したメンズサロンをオープン。


https://kamiken.jp/

シリーズ:この人から学ぶ、成功の秘訣「TBMG」

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