練習は朝、自分の時間を大切にできる仕組みを構築
福利厚生はどうされていますか?
SIXは完全週休二日制で、売上が上がれば給料も上がりますが、休みも増える仕組みです。美容師という仕事は20代半ばまでが勝負という“短距離走”だと思われがちですが、人とのコミュニティの場所を大切にしたり、デートをしたり、30歳を超えたら健康面にも気遣ったりしながら長く続けていくのが本来の姿だと思うんです。長く働き続けてもらうため、ある程度のレベルになると有給休暇が年間で30日くらいになるような仕組みを取り入れています。夜は早めに帰って自分の時間を過ごし、プライベートでもたくさんのことを経験してほしいと思っています。プライベートが充実すると心が潤い、いい仕事にもつながります。先輩が帰るまで帰れないとか、夜11時過ぎまで練習するとかはしないように徹底していますね。練習するなら朝です。大切なのは時間価値を高めること。限られた時間を有効に使い、将来的には完全週休3日制を目指しています。また、新年会や忘年会、みんなでお祭りや花火に行ったり、ちょこちょこ飲みに行ったりもしながら、コミュニケーションを取っています。
女性をヘアだけでなくメイクでも素敵にしたい
久保さんといえば“クボメイク”。メイクを始めたきっかけは?
美容師になった当初は、男性がメイクをするという概念がなく、自分でメイクをするということは絶対にないと思っていました。しかし作品撮りを始めた時、メイクができる人を毎回頼むよりも自分でやったほうが都合がいいと考え、勉強することにしました。同じサロンにいたメイクが上手な女性スタッフに、とりあえずこれだけは買ってくださいというリストをもらい、その通りのコスメを1人で買いに行き、猛烈に恥ずかしかったことを覚えています。全く知識が無かったので、何をどこにどう塗るのかもよく分かっていませんでしたね。リップ、チーク、アイシャドウを1個ずつ買い、撮影の時に色々と組み合わせて塗っていくという感じでした。ですので、学校に行って学んだわけではありません。当時、カメラは楽しくて夢中になっていましたが、メイクは苦手でしたね。できればやりたくなかったです(笑)。ただ、女性をヘアだけでなくメイクも含めて素敵にしたいという思いで、勉強しました。
固定概念にとらわれず、オリジナリティを追求
“クボメイク”はどのようにして生まれたのですか?
その頃は「アイシャドウとチークの違いって?」というレベルでした(笑)。何をどうしたら自分のイメージする質感が出せるのかも全く分からず、ただ塗るという感じでした。そんな時に、リップにもチークにも使えて、指でつけてトントンと叩くだけという「リップ&チーククリーム」(ヴィセ/コーセー)というアイテムに出会い、僕の固定概念がガラッと変わったんです。正解なんてない、どこに塗るのがいいのかわからないけど自分の感性でやってみよう、結果的に可愛くなればいいんだ、そう思ったんです。そこからメイクがすごく楽しくなり、自分の頭で描いたビジュアルを作るための最短手順を考えるようになりました。つまり“クボメイク”は自己流で、合っているかどうかはわかりません。逆になぜそこに塗らなければいけないの?という自由な発想が肝です。正解なんてないと思っています。メイク本も持ってはいましたが、あえて読まないようにしていました。読むとセオリー通りになってしまいそうだったからです。行ける所までオリジナリティを追求してみようと思いました。今ではコスメを買いに行くのも全然恥ずかしくなくなりました!
デッサンにコスメを塗って、色のバランスを考える
メイクで大事にしていることは何ですか?
色のバランスです。塗り絵的な感覚に近い、色遊びが僕の得意分野。顔のデッサンを描いた紙を何枚もコピーして、それに実際にコスメを塗ります。このコスメをここに使いたいなとか、衣装に合わせて色を考えたりする時、ひたすらこれに描いてみます。コスメは見た目と塗った時の色が違いますし、質感も思っていたのと違う場合がありますが、塗ってみるととてもよくわかります。実際にその通りにモデルさんにメイクして撮影することもあります。同じアイテムの色違いをひとつひとつ紙に塗って表にしたカラーチャートのような物も作っています。僕の一番の強みは、ヘアとメイクの関係性がわかっているということ。メイク専門職ではなく美容師なので、リアルな髪のトレンドも知っていますし、カットもカラーもできます。髪の流行りとメイクの流行りを両方わかっていることによって、そのモデルさんの魅力を最大限に引き出せるのではないかと思っています。

久保雄司(クボユウジ)
SIX代表。
都内3店舗を経て2017年、表参道にSIXをオープン。サロンワークの他、雑誌や広告、TVなどでヘアメイクとしても活動し、全国で美容師や一般の方へのイベントも行う。2016年に『#クボメイク』(講談社刊)を出版。多方面で活躍中。

SIX
都会の喧騒を忘れさせてくれるような閑静な街並みの中に融合しつつ、ひと際ハイセンスな空間が目を引く。一人一人の魅力を引き出すスタイルや、サロンで過ごす特別な時間を提供し、お客様にとっての“一番”を追求。今もっとも注目されているサロンのひとつ。