創業80年を迎えるSKYグループの三代目として生まれた茂木宏太さん。家業を継ぐ道は一見、敷かれたレールの上を走るだけのように見えるが、実際は幾多の困難にぶち当たったり、人知れず努力したり…。今年で社長就任16年を迎え、伝統を継承しつつ新しい組織をつくり上げた茂木さんの経営理念と熱い想いを伺いました。
ライター 森永 泰恵 | カメラ 小池 徹 | 配信日 2019.9.26
宿命を感じ、自然な流れで後を継ぐことを決意
美容師を志したきっかけは何ですか?
僕はSKYを創業した祖父の長男の長男ですから、幼少の頃から後を継ぐよう言われていましたし、僕自身も宿命を感じていました。よく二代目の方で、普段の生活の中に理美容業があったという方もいらっしゃると思いますが、うちは自宅とサロンが別の場所にあり、適度な距離感があった上でこの仕事を見聞きしていたので、理美容業のきれいな部分が見えていたのでしょうね。自然と憧れ、当時の社員が楽しそうに働いて会社を大切に思ってくれていたのを子どもの頃から見ていたので、何の疑問もなく、自然な流れで高校生の時に意を決しました。
美容部門のトップを目指そうと思った
修業先に美容室を選んだのはなぜですか?
SKYには理容部門と美容部門の両方あるのですが、美容部門のトップがまだ育っていなかったこともあり、それこそが自分のやるべき方向性だと思い、祖父も父も理容師ですが僕はあえて美容の道に進みました。専門学校卒業後はTAYAに入社し、5年半くらいお世話になりました。入社から3カ月後の6月頃、夏の店販キャンペーンが行われたんですが、僕はまだアシスタントで売上に貢献できていなかったので、店販を誰よりも売ろうと目標を立ててキャンペーンにのぞみました。その結果、店販売上の新記録を達成!その記録はいまだに破られていないんですよ。サロンはいつも活力があり、規模も大きいのでたくさんの人と関わらせていただき、本当に充実した日々でした。入社3年でデビューしてからは「200万円プレイヤーになる」ことを目標に掲げ、一生懸命練習しましたよ。私はあまり器用ではないのですが、当時はそこが売れっ子の基準であり、自分としてもそれくらいの自力を持ってSKYに帰らないと認めてもらえないだろうと考え、自分なりの目標を持って日々サロンワークに励んでいました。
200万円プレイヤーとなり、SKYに帰って現場からスタート
SKYに帰り、最初はどんなことから始めたのですか?
TAYAではサロンワークを通してチームで仕事をすることの大切さを学ばせていただいたり、努力すれば必ず認めてもらえる喜びを感じたり、本当に勉強になりました。当時の店長こそ僕の目指す人で、今でも最高の美容師だと思っています。当時800人ほどいたスタッフの中でトップの技術を持っていて、選抜メンバーとしてステージですごくカッコいい作品を作っていました。女性の方なのですが、僕はとにかくその店長みたいな技術者になりたくて、憧れていました。いよいよ自分が目標としていた「200万円プレイヤー」をクリアしたところでその店長に相談し、「SKY」に帰ることにしたのですが、最初は錦糸町の店舗に入って現場からスタート。TAYAで経験した技術のこと、メニュー作り、チームでひとつの事柄に向かっていくことなど、僕の実体験で得たものをスタッフに伝えることでリーダーシップを発揮できたと思っています。
最初の5年、10年は記憶にないほど必死だった
社長就任当初はどんな思いでしたか?
SKYに入社してから半年後に店長になり、エリア長、美容部門のマネージャーと立場を変えながら経験を積み、2003年、33歳の時に社長に就任しました。父から「来年から社長に」と言われた時、ためらいもなく「やらせてください」と言ったことを覚えています。子どもの頃から、お正月やミーティングの際にSKYの幹部たちが家に集まって、ずっと仕事の話をしているのをよく見ていたので、SKYファミリーとは何か、それを継ぐということはどういうことなのかは、高校の時に決心して以来、覚悟はできていたので迷いはありませんでした。しかし、社長になってから、大変なことを引き受けたなと感じましたね。150人を超えるスタッフとその家族がいて、それぞれの人生を背負って…そう考えると、経験を積むごとに重さを感じました。最初は本当に手探りでしたが、父の時代から会社を支えていた幹部たちがそのまま僕をサポートしてくれたことが大きかったです。未熟で何も知らない僕を受け入れ、サポートしてくれて、彼らには本当に感謝しています。最初の5年、10年は、どう過ごしたかはっきり覚えてないくらい必死でしたね。特に最初の5年はひどかったと思います(笑)。ただ、美容部門に関しては当時トップとして仕切る人がいなかったので、僕が社長になったことで美容部門のスタッフは心強く感じてくれたと思っています。

茂木宏太(モギコウタ)
SKYグループ代表取締役社長。
1990年、株式会社田谷入社。5年半の修業を経て1996年、株式会社スカイ入社。2003年、株式会社スカイ代表取締役社長に就任。伝統を継承する一方、従来の「理容室」「美容室」の枠を超えた独自の新業態開発に取り組んでいる。

SKY
メンズグルーミングサロン&メンズトータルビューティに特化した「ビューレックス」、理容師が行う女性専門のシェービングサロン「ラヴィーチ」、独自のヘッドスパを提供する美容室、忙しいビジネスパーソン向けのコンディショニングサロン「Re:kyu」など、4つの業態で19店舗を展開中。