北原 孝彦さん(Dears)

特に強い思い入れがあったわけではなく美容界の扉を叩いた北原さん。しかし、サロンに入ってからは猛練習を重ねて1年でスタイリストとなり、若くして経営ノウハウを独学で身につけ、あっという間に80店舗を展開するサロンオーナーに。そんな北原さんのサクセスストーリーと確固たる経営理念を、じっくりお聞きしました。

ライター 森永 泰恵 | カメラ 岡本 大翼 | 配信日 2019.5.30

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勉強から逃げるように専門学校へ進学

美容師を志したきっかけは何ですか?

北原孝彦さん(Dears)

高校生の頃、親からもらった美容室代を自分のお小遣いにしたくて、自分で自分の髪を切るようになったことがきっかけです。その頃は楽しいというより、髪を切る瞬間のジョリジョリという音が心地よかっただけで、むしろ浮いたお金で何を買おうかと考えていました。勉強はこれ以上したくない、でも働くのも…、という消極的な考えで理美容専門学校に進学したのですが、両親はそんな僕の決断に反対せず、見守ってくれました。卒業後は地元のサロンに就職したのですが、学生時代、なかなかうまく友達ができず孤独になりがちだった僕に、サロンのオーナーや先輩たちはすごくよくしてくれて、深い愛情を感じたんです。僕を美容の道へ導こうとしてくれているのがよくわかりました。僕はその気持ちに応えようと、先輩の3倍練習を重ね、時には朝5時まで練習することも。普通の人が3~4年かかるところを1年でスタイリストにしていただきました。アシスタント時代は、「自分の日当に相当する金額の店販を売る」ことを目標に掲げ、自分なりにマニュアルを編みだして実践した結果、他の誰よりも店販を売っていましたね。それを社内で統一してみんなで実践すると、他のスタッフも売れるようになり、仕組みを作ることの大切さを学びました。

経営の改革を提案したものの、実現が難しかった

独立しようと思ったのはなぜですか?

スタイリストになってからの目標は「オーナーの売上を超すこと」。オーナーはとてもいい方で、色々教えてくださり、大好きでした。この人についていこうと思っていたので独立する気持ちはなかったのですが、僕が売上でオーナーを追い抜けば、認めてもらえると思ったんです。この人に認めてもらいたいという承認欲求ですね。結果的には数年後に追い抜くことができたことと、スタッフの教育を任される中で経営の勉強を始めたことが、独立する流れにつながったのかもしれませんが、とにかくオーナーに近づきたい、役に立ちたいという思いで頑張っていました。サロンでトップになり、経営面も勉強するうちに、僕の頭の中に「このやり方をすれば売上が上がる」という方程式が見つかり、それを実践すれば会社の環境が革命的に変わり、効率化を図れると考えました。そのための組織設計や事業作りを自分なりにまとめ、生意気にもオーナーに提案したのですが、実現するのがなかなか難しかったということもあり、退社させていただき、自分のサロンをつくって実践することにしました。

Dears

1店舗目が成功したら、全国展開を進める覚悟だった

最初から全国展開を考えていたのですか?

Dears

25~26歳の頃、「空いた時間でお金を稼ごう」というネット記事をたまたま見たことをきっかけに色々勉強し、アフィリエイト(成功報酬型のインターネット広告。ブログで広告収益を得ること)を運用することでweb集客を学びました。それを生かしつつ、ほぼ独学で学んだ経営理念のもと、2015年に1店舗目を長野県長野市に出店。オープンから3カ月で予約が1カ月先まで埋まるようになったんです。僕は最初から全国展開を想定していたので、1店舗目は自分が考えた仕組みがちゃんと機能するかどうかのテストケースでもありました。このまま全国展開できそうなら事業を進めるし、できなかったら1店舗目も閉めようという覚悟で臨みましたが、オープンから半年後、スタッフが順調に育ってきたこともあり、2店舗目の準備を始め、11カ月後には2店舗目をオープンすることができました。

店長不在の組織経営、FC参入へと事業を展開

2店舗目、3店舗目では、どのような仕組みをテストしたのですか?

Dears

2店舗目では店長不在の組織経営をしたいと考えていました。全員が横並び、平等な立場で仕事ができる環境を作りたくて、スタッフだけで構成したサロンを作り、店長なしでも機能するかをテストしたのですが、それがうまく機能したんです。3店舗目はフランチャイズ(以下FC)に参入することをスタートしました。僕は「Dears」をオープンする時、やるなら一番になりたいと思い、全国47都道府県で出店するという目標を掲げていたのですが、借入をするのにも限界があるので、直営店だけにこだわらずFC展開することを最初から視野に入れ、webで経営困難なサロンから問い合わせが来るようにしておいたんです。すぐに2サロンから問い合わせがあり、FC契約をしました。「Dears」の仕組みで実践してもらったところ、傾いていた経営がV字回復したんです。売上は3カ月で4倍になりました。それがFCの最初ですね。これはいける、と確信しました。「Dears」に加盟して1年~1年半で2店舗目を出店するオーナーさんが多いですし、現在75店舗あるFC店舗で成功しなかった人は今まで1人もいません。今では新規独立を考えている方が「『Dears』さんとやりたいです」と言ってくれるケースも増えています。

他社に勝つための“働き方改革”を最初から実践

サロンコンセプトや働き方改革について教えてください。

オープン当初からサロンコンセプトは「キレイな髪へ導く艶髪サロン」です。前のサロンで当時の経営者さんにご相談したり、自分で考えていたものをベースに、メニューをすべてフルコースのセットメニューにし、単品メニューは置いていません。カットのみの料金はあえて高めに設定し、基本的にはお受けしないようにしています。セットメニューはお客様にとってもわかりやすいですし、単価の高いお客様が揃うという点で経営がやりやすいんです。実はカットというのは失客する大きな原因の1つですから、カットのみをメニューにしないというのは失客を防ぐ策でもあります。うちは都心のデザイン系のサロンではないので、わかりやすく差別化できるサロンメニューを考えた結果、今のような形になりました。また、週休2~3日制やフレックス制、店長不在のフラットな組織形態というのも、最初から考えていたことです。働き方改革をいち早く取り入れたのは、他社に勝つにはそれしかないと思ったから。他社との差別化ということで言えば、マンツーマン対応も同じです。同時に複数のお客様に対応しないという仕組みは、お客様がリピートしない原因がどこにあるのかも明確になります。もちろんお客様の満足度を上げるための仕組みでもありますが、マンツーマンがなぜいいのかをよく理解し、経営者目線でマンツーマンを選ばないと意味がないと思うんです。なんとなくよさそうだから、他社がやっているから、では勝ち残っていけないと僕は思います。

Dears

コミュニケーションをシンプルにしたかった

サロンルーミング(個室・半個室)を実践されている理由は何ですか?

Dears

タカラさんが推奨されているサロンルーミング(個室や半個室を活用することで、一人ひとりのお客様に合わせて空間・時間・コミュニケーションを最適にした状態)という考え方に共感しました。「Dears」でも取り入れているのですが、個室・半個室のメリットは、お客様が周りの目線を気にせずに済む、そのスタッフに対して専用の部屋を提供できる、ということの他に、「スタッフが他のスタッフと必要以上にコミュニケーションを取らなくてもいい」ということもあります。美容師の離職原因を調べてみると、人間関係に疲れて退社するケースも多く、トラブルの原因になることもありますから、そもそも必要以上にコミュニケーションを取らなくてもいい環境を作ればいいと考えたんです。人間関係が希薄とか冷たいとかではなく、シンプルにするという考え方。「Dears」でもスタッフ同士はとても仲が良く、飲み会などもよく開催しているようです。オン・オフのメリハリがしっかりつきますね。仕事中のコミュニケーションが複雑になればなるほどお互いの正義がぶつかり合い、亀裂が入りますよね。個室・半個室なら他のスタッフに気を使うことなく、マンツーマンで目の前のお客様を喜ばせることだけに集中できます。

合理的なルールによって離職率を下げる

フレックス制のメリットは何ですか?

フレックス制だと出勤時間もそれぞれ異なりますから、自分の仕事に対しての責任も重くなりますし、自分のことは自分でやるのが基本です。タオルは自分が使う分だけ畳み、早く来た人だけがタオルを全部畳むことも掃除をやることもありません。みんな平等に仕事を統一化させることによって、何時に出勤してもいいようにしました。自分のお客様が終わったら帰ってOKですし、朝一のお客様が急遽キャンセルになったら、その次のお客様の時間に合わせて出勤すればOK(予約の30分前に出勤するルール)。みんなが仕事を終えるまで帰れないというのは生産性がないことだと思っています。「Dears」は完全予約制ですので、当日予約は無理して取る必要がないというルール。すべてを合理的な仕組みにしているので、みんな辞めないですね。昔は今のネット社会と違い、他のサロンの情報まではなかなか入ってきませんから、こんなものか、と納得できていた部分もあったのでしょうが、今はwebやSNSで簡単に比較できます。ですから、サービスも雇用環境も魅力あるサロンを作っておかないと勝てない時代だと思います。

Dears

LINEで連絡を取り合えればOK

練習やミーティングはどうしているのですか?

北原 孝彦さん(Dears)

「Dears」は中途採用がベースですので、すでに基本的な技術を持っている方たちが入ってきます。ですので3カ月間だけマニュアルの動画を見てトレーニングしてもらい、先輩スタイリストの髪を担当してアドバイスを受けます。その3カ月で技術だけでなく、先輩の働き方を見て学んでもらうシステムです。元々「Dears」の考え方に共感してくれる人に入ってもらうようにしているので、みんなすっと受け入れ、実践してくれています。また、店長などの管理職もいないので、ミーティングは一切ありません。仕組みができているので僕が行かなくても大丈夫なんです。僕とスタッフはLINEを通じて連絡を取り合います。スタッフが僕に頻繁に会いたいかというと…、連絡だけでいいのではないかなと(笑)。1年に1回くらい「たまには顔を出してくださいよ」と言われた時だけ行くという感じです。とはいえ、何かトラブルが起きた時は話し合いの場を持ちます。業績が上がらなくても怒りませんが、スタッフが気持ちよく働くために僕が考えたルールを破るのは絶対ダメだよといつも言っていて、ルールを守っていない場合はそれなりに厳しい言葉をかけることもあります。

色々と事業をやることで、自分を奮い立たせています

全国47都道府県を制覇したら、その次の目標は…?

Dears

2020年までに全都道府県に出店する目標を掲げていますが、その後には、育毛、まつ育、農業、ホテル、パーソナルトレーナーで全国制覇、この5つが目標です。育毛とまつ育はすでにビジネスモデルがあり、スタートしています。実は僕の弟は障害を持っているのですが、弟の働ける場を設けたくて立ち上げたのが今の会社なんです。接客はできませんが、彼にもできる仕事はたくさんあります。ゆくゆくは弟と同じように障害を持った方の雇用先となるような事業ができればいいなと考えています。僕は暇な時間を作ってしまうと生活が乱れ、大好きなゲームばかりやり続けて、おかしな方向にいってしまいそうな気がしているので(笑)、弟を守っていかねばという気持ちも根底にありつつ、色々と事業をやることで自分を奮い立たせています。

何をしたら勝てるのかを考えることが大切

経営者として大切にしていることは何ですか?

3つのことを経営の軸として持っています。1つ目は“絶対成功させること”。人を巻き込んでお金を使う以上は、絶対に成功しないと誰も幸せにならないと思うからです。2つ目は“自分の幸せのためにやること”。自己犠牲をベースにした仕事は続きません。自分を幸せにするために誰を喜ばせるかを明確にすることが大事です。3つ目は“バランス感覚を養うこと”。世の中に対して必要な物を必要なタイミングでポンと落とし込んでいる人が勝っている=事業で成功している人たちはみなバランス感覚に優れています。市場を見て、今何が必要とされているのか、何をすれば売れるのかを見極めることが重要なんです。売りたいものを売るのではなくて、何をしたら売れるのか、何をしたら勝てるのかを考え、勝っていくことが肝心。自分の幸せのためにどのような事業を立ち上げ、誰を幸せにすればいいのか――。ここを間違えなければ、経営はそんなに難しくないのではないかと思っています。

Dears

自分がやりたいと思うことは必ず具現化できる

若い世代の方たちへのメッセージをお願いします。

北原 孝彦さん(Dears)

僕は理美容師を通して人としてどうあるべきかを学び、この業界で好きな人が何人もできました。そして、その人たちみたいになりたいと思って日々、努力を積み重ねていったところ、北原さんみたいになりたいと言ってくれる人が現れました。結果、自分のもとに人が集まり、事業の話が集まり、お客様も集まり、社員も集まって、お金も集まりました。うまくいかずに悩んだり不安になることもあるでしょうが、自分の好きな人を見つけて、その人に認めてもらおう、その人みたいになろうと思って日々努力しながら適切な選択を積み重ねていけば、自分がやりたいと思える、想像できることは全部具現化できると思っています。それは美容師ではなくてもどんな仕事でも同じだと思っています。勉強が苦手だった僕が学べたので、きっとみなさんにはもっと可能性があると思います。

北原 孝彦さん(Dears)

北原 孝彦さん

Dears代表。

1983年生まれ。長野県出身。専門学校を卒業後、地元のサロンに就職。31歳の時に退社し、2015年「Dears」を設立。オープン3カ月で予約が1カ月先まで埋まる人気サロンに。11か月後には2店舗目を出店し、2017年には全国30店舗に拡大。2019年5月現在、直営店5店舗、FC75店舗、計80店舗を展開中。

Dears

Dears

「キレイな髪へ導く艶髪サロン」をキーワードに、お客様の悩める髪を誰もが憧れる艶髪へと導く。スタイリストはマンツーマンで施術を行い、週休2~3日制やフレックス制度、管理職なしなど、スタッフが自由に活動できる働き方改革を推進している。


https://dears-salon.com

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