倉田和俊さん(KEEN creative hair)

自由に生きたいと思った学生時代、父の姿を見て理容師に魅力を感じた。その後、専門学校生時代に出会った世界チャンピオンの本に感銘を受け、そのもとへ就職する。数々のコンテストにトライし、苦難の道のりを経て念願の日本チャンピオンの座に。そして、かねてからの夢だったサロンを自由が丘にオープン。今では上質な空間とサービスを兼ね備えた新感覚のヘアサロンとして4店舗を展開する。

ライター 前田 正明 | カメラ 藤村 徹 | 配信日 2016.6.9

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父の姿を見て理容師は人に必要とされ感謝される職業だと知った

 理容師になったきっかけを教えていただけますか?

倉田和俊さん(KEEN creative hair)

私は横浜で理容業を営む3代目ですが、子供の頃から親に理容師になれと言われたことは一度もなく、自由に生きたいと思っていました。現に、弟は獣医になっています。多分、両親が強制的に理容師にさせられたので、子供たちには自由にさせたかったんでしょう。中学3年生のある時、お小遣いがほしくなり、スタッフが大勢いるのに無理を言って日曜日だけお店のお手伝いをさせてもらったことがありました。1日働いて5000円くらいはもらえるかなと思っていたのですが、実際には3000円。もっと欲しかったと父に言うと、父が激怒しました。今でこそわかりますが、生産性のない人間に多くは払えないですよね。お金を稼ぐことの大変さと共に、朝から10時間も立ちっぱなしで仕事をするこの職業の大変さも実感し、自分には無理だと思いました。ところが、父の努力している姿をずっと見ていて、理容師は人に必要とされ、また感謝される職業なんだと理解するようになりました。その後、短大に進学して、卒業後に理容学校に行こうと決めました。

今まで1番になったことがない私が初めて1番になりたいと思った

 理容学校時代の思い出やその当時に考えていたことはなんですか?

学生時代から、家業を継ぐのではなく自分のお店を持ちたいという希望を持っていました。それは、全理連中央講師をしている父に頼らずに、自分の力を試してみたかったからです。父から、理容師を目指すなら学校から帰宅してすぐお店を手伝い、土日は朝から閉店まで仕事をしてその後に練習をするように言われました。それができないなら理容師は無理だと。自由な時間はほとんどなく忙しい毎日でしたが、私には覚悟があったので苦にはなりませんでした。そんな専門学校生時代に田中トシオ先生を知り、先生の本を読んで大きな衝撃を受けました。努力をすることの大切さ、そして夢ではなく目標にすることの大切さを知りました。今まで一番になったことがない私がその本を読み、初めてこの職業で一番になりたいと思いました。決して世界チャンピオンになった経歴だけではなく、仕事に対する先生の情熱にひかれたんです。この人と同じように努力すれば、自分も一番になれるんじゃないか。そんな気持ちになり、一瞬で田中先生のもとで働きたいと思いました。

KEEN creative hair

努力の積み重ねで結果を出せば次に進めるそんな環境が嬉しかった

田中トシオ先生の印象や髪ingで新人時代に感じたことはなんですか?

田中先生に初めてお会いしたのは面接の時でした。すごいオーラを感じ、小柄なのに大きく見えたことを覚えています。珍しく緊張した私はあまり話すことができなくて、同伴した父が熱く代弁してくれました(笑)。そんな姿を見てか、先生は「しっかり考えて自分の気持ちで明日以降に返事をください」と言われました。私の気持ちに変化はなかったので、翌日すぐに電話をして内定をいただきました。実は、その年の髪ingの採用はほぼ定員に達していたので私は最後の採用でした。それを知り、先生に後悔させないよう、誰よりも頑張ろうと決意しました。髪ingは世界チャンピオンのお店で、しかも先輩スタッフの中にも大勢の日本チャンピオンがいます。器用で天才的な人が大勢いるんだと思っていましたが、実際は毎日の努力の積み重ねだったんです。テストに合格すれば接客ができる、結果を出せば次に進める。そんな環境が嬉しくて毎日全力で練習に励み、2年目の6月にはカットに合格して技術者としてデビューできました。

倉田和俊さん(KEEN creative hair)

厳しい店内試験をパスし念願叶ってスタイリストデビューを果たす

理容師になって苦心したことや初めて接客をした時のことを教えてください。

最初に苦労したのは新人の頃のシャンプーテストでした。1カ月で50人を練習すればテストに受験できるシステムで、仮に不合格になってもさらに10人練習すれば追試を受けられます。ただ、翌月になると新たに50人の練習をしないと受験できないんです。練習するのも大変ですが、練習させてくれる人を探すのにも苦労しました。私は4月のテストで不合格になり、5月には10日でノルマを達成して受験しました。ところがその時も不合格。とにかく、必死で練習しましたね。デビューして初めてカットしたのはシャンプーやシェービングを担当していた時のお客様でした。私がカットテストを受けることを話すと、「じゃあ、テストに合格したら連絡してよ。指名するから」と言われたんです。そのひと言が頭に残っていて、テストに合格してすぐにお電話をしました。今思えば大変失礼なことをしたなと思いますが、電話をしたのは夜中の11時だったんです。嬉しくて思わず「受かりました!ありがとうございました!」って(笑)。その方は忙しいにもかかわらず、翌日の夕方に来店してくださいました。あの時は本当に感動しました。

KEEN creative hair

理容師の社会的地位を高めるために日本チャンピオンを目指した

コンテストに関して苦労したことや考えていたことはなんですか?

倉田和俊さん(KEEN creative hair)

最初に出たコンテストはクラシカルバック部門です。出場選手が約200人もいて、当然入賞なんかできません。初めて賞を獲ったのが2年目の秋で9回目くらいのトライでした。名前を呼ばれた瞬間はやっと入賞できて嬉しかったです。私は21歳の時に決めた目標があり、それは「理容師のイメージを変える理容師になること」でした。そのために日本チャンピオンになることが目標でした。これは学生時代から感じていたことですが、毎日朝から夜遅くまで休日も取らず努力をしているのに、どうして理容師は社会的地位が低いのか疑問でした。昔、ある知人の息子さんが学校の先生から、「君は将来、家を継いで床屋さんになるから勉強できなくてもいいよね」と言われたそうです。それを聞いた知人が激怒して、「理容師をバカにするのは許せない。理容師は他人の何倍も努力しているのだから!」と抗議したそうです。その話を聞いた時、私も悔しい思いをしました。世間の持つ理容師のイメージを変えたい。そのために、まず日本チャンピオンになって実力と実績を作ることを目標にしました。私がコンテストに出たりセミナーの講師をする意義がそこにあります。

負けて感謝の言葉を叫んだ姿に師匠からねぎらいを受けて涙した

全国大会に出場して入賞した喜びや悔しい思いを教えてください。

倉田さんの道具

全国大会に初めて出場したのが店長2年目となった入社6年目でした。部門は2部のレディースカットヘアです。最初は私も1部に挑戦していましたが、前年の東京大会であえなく賞外。そこで田中先生から2部への挑戦をすすめられたんです。初めは1部にこだわっていましたが、先生に「一から教えるから」と強い説得をされ、決心しました。当時サロンワークでも3割くらい女性客を担当していたので苦はありませんでしたが、派手なカラーをした女性モデルの隣で年配の男性客がパンチパーマをかけるという奇妙な光景でした(笑)。先生からは、今まで努力したベースがあるからこそ2部でも戦えるんだという言葉をいただき、思いきり戦えました。初の全国大会で2位に入賞することができ、この時は本当に嬉しかったですね。戦う前は全く期待されず、逆にそれがやる気に変わりましたから。そして、次回は優勝だという期待を受けて臨んだ翌年。関東大会での優勝をひっさげて挑みましたが同じく2位。本当に悔しい思いをしましたが、表彰式では大きな声で「ありがとうございました」と叫びました。私たちがコンテストに参加できるのも多くの支えてくれる方や応援してくれる方々のお陰です。そのことに感謝しなければいけないと先生から常々教わっていました。その姿を見た先生から「倉田は負けはしたが、師匠として誇らしかった」と言葉をかけてもらいました。その言葉を聞いてまた涙しましたね。

惨敗を喫した地区大会から師匠の激励で日本チャンピオンに

日本チャンピオンになるまでの苦労や優勝の感想はどうでしたか?

KEEN creative hair

KEEN creative hair

日本チャンピオンになったのは3度目の挑戦の時でした。東京大会では優勝できたのですが、実は関東大会でまさかの賞外。戦う前から自信をなくして、作品的にも勢いや覇気が感じられず惨敗でした。そんな意気消沈した私に先生が、「お前はここで自分の夢を自らあきらめるのか」と業を煮やして言われたんです。全国大会を控えた1週間前の合宿の時でした。私はこの2年間で入賞は当たり前で結果ばかりを気にして、いい作品を作るという本来の志を忘れていたんです。先生のその言葉で私は開き直ることができ、無我夢中でやっていた頃を思い出して練習に励み大会に臨みました。その結果、優勝が決まり、先生と抱き合って喜びを分かち合った時が最高の瞬間でしたね。実は、父が神奈川県代表の選手団長で、私のいない場所で泣いていたと聞き感激しました。これで1つの目標が達成できて、その後は自分のお店を持ちたいという目標に徐々に気持ちが傾いていきました。

LEDを駆使してトリコロールに輝く外観で理容店のイメージを一新

 出店するにあたり目指していたサロン像やご苦労はなんですか?

私は30歳で自分のサロンを持ちたいという目標があったので、独立の際は先生に相談をして承諾していただきました。出店するにあたって、資金面や物件探しなどすべての面で苦労しました。場所は学生時代によく遊びに行っていた自由が丘。髪ing時代は、毎月のご指名が約150人で合計で250人以上のお得意様がいましたが、すべて後輩たちに引き継ぎました。当然、集客にも苦労しましたが、やはり自分の力を試してみたくて、髪ingのお客様には一切お知らせせずに独立しました。オープンの時には、近隣に住む住民の方や店舗にも一軒一軒回ってご挨拶をしましたね。そして、理容のイメージを変えたいという目標通り、外観はLEDを点灯させてトリコロールに変わる仕組みでインパクトを与え、内装はモダンで落ち着きのムードにして自由が丘のランドマークを目指しました。それが好評で注目を集め、雑誌の商店建築の表紙にも採用されました。店名のKEENは「熱心な」や「鋭い」という意味で、それぞれの頭文字に「Kind・親切に」「Eregant・素敵な」「Emotion・感動を」「Network・発信する」というお客様への気持ちを込めています。それと同時にスタッフに対しては、「KEEN'staff」「Effort・努力」「Effect・結果を出し」「Novel・革新的に」という願いも込めているんです。ロゴはハサミのリング部分と蝶をモチーフにし、お客様が蝶のように美しくなってほしいという意味を込めました。そして今回KEEN初となるFCの青葉台店では、メニューもシャンプーラボなどを設けて、他店ではやっていない「できる男をサポート」するオリジナルを展開しています。

KEEN creative hair 自由が丘店/永井泰史@商店建築

スタッフが活躍できるステージを提供しさらにOBもサポートする

 経営者になって危機を迎えたことや悩んだことはなんですか?

2年目を迎えた頃、スタッフが次々と退職してしまい、私を含めて2人だけになってしまったんです。私の、上から目線で厳しい指導が原因でした。唯一残ってくれたスタッフを絶対に将来成功させてあげたいと強く思いました。悩んで悩んで、ようやく昔ながらの指導方法ではだめだと気づき、田中先生が言われた人を育てることの大切さを思い出して自分を変えようと決めました。この頃が最大の危機でしたね。その後、ありがたいことにスタッフが毎年入社してくれて、徐々に体制を取り戻すことができました。そんな苦い経験があったからこそ今の自分があると感じています。今では4店舗と、当時残ってくれたスタッフを応援するパートナーサロンを含めて5店舗を展開しています。支店をオープンするのはスタッフが活躍して成長できる場を提供するのが目的です。今では、私が50歳になるまでに年収1,000万円のOBを5人作ることと、「人を育てられる理容師」を育てることを目標にしています。今の若いスタッフたちが、30年後も幸せでいてくれたら嬉しいですね。私はスタッフに、差別化ではなく、独自化が大切だと言い聞かせています。情熱を持って真剣に考えて考えて考え抜けば、何をすべきか見えてくるはずだと。どこのサロンもやっていないちょっとの工夫で、お客様を幸せな気持ちにすることができ、そのオリジナリティがKEENの価値に繋がっていくと指導しています。なり手が少ない業界と言われていますが、むしろそこには大きなチャンスが広がっています。だから、これから将来の理容界を担う若い人には、いろんなことにチャレンジして自分を高めながらどんどん活躍していってほしいですね。30年後も幸せで充実した人生を送れる業界を目指して、私の理容道を貫きながら頑張っていきたいと思います。

倉田和俊さん(KEEN creative hair)
倉田和俊(KEEN c(r)

倉田和俊(クラタカズトシ)

KEEN creative hair代表。神奈川県出身。横浜商業高校理容科卒業。学生時代に田中トシオ氏に憧れ、髪ingに入社。入社5年目でひばりが丘店店長に就任。その後、6店舗のテクニカルマネージャーとして約50名のスタッフを束ねる。2002年に全国理容競技大会・レディース部門で優勝。2007年と2012年にはOMCアジアカップ・メンズヘア部門で優勝と総合優勝を獲得しアジアチャンピオンとなるなど数々の経歴を有す。2004年9月に自由が丘でKEEN creative hairをオープン。2016年5月、全理連中央講師に就任。現在、サロンワークを中心に雑誌、TV撮影、各種講演・講習、競技大会審査員などを行っている。


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KEEN creative hair

KEEN creative hair

自由が丘を拠点に、東京と神奈川でFC店を含め4店舗を展開。カラーは250種類以上、シャンプーはコンディションを確認しながらお客様に合ったものをご提案する。男性を中心にすべてのお客様にとって上質なサービスと空間をご提供し、KEENのロゴマークがサナギから蝶へ変化したように、お客様にも素敵になってご満足していただけるように最高の技術でおもてなしをする。


https://www.keen914.com/

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