関根一芳さん/Le Clic | ||
技術のトレーニング以外にスタッフを育成する上で重要なことは何か。それは、接客時のコミュニケーションを高めるための教育。日々のサロンワークで常に考えることの大切さを教え、それを実践できる職場環境を整えた。さらに、鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに、新人スタッフに対する3つの提言でプロとしての心構えを説いた。
ライター 前田正明 | カメラ 更科智子 | 配信日 2012.8.2
レベルに応じて何を考えて仕事をするべきかを教える
Le Clicをオープンして今年で25周年を迎えます。その間、技術以外にスタッフ教育で10数年前から実践していることがあります。それは、接客に関する指導です。ほとんどの美容室では技術のトレーニングばかりのはず。今ではカウンセリングを導入しているサロンも多く、もっとお客さまとの対話や交渉力を高める教育が必要だと感じたんです。多分、接客時にお客さまから何を聞き出すかを教えているサロンは少ないでしょう。また、スタッフ個々のレベルに応じて何を考えて仕事をするべきかを教えています。私たちの仕事は、まずお互いにコミュニケーションを図ることからスタートします。例えば、シャンプーをしたお客さまの名前を全て言えるかとスタッフに問えば、100%は答えられません。さらに、髪質やそれに応じてどんな施術をしたのか、それに対して確認はしたのか。シャンプーだけでもたくさんの確認事項があり、それがコミュニケーションにつながるんです。それを実践できるように、答えを教えるのではなく、考えることを身につけさせています。
来店客から信頼を得るために新人を育てる3つの提言
私は新人スタッフに3つのことを言っています。まず1つは、美容師として一生頑張るだけの覚悟を決めること。それを決めないから心が揺れて美容師を辞める訳で、覚悟を決めて頑張れば後にいい人生だったと思えるかもしれません。2つ目は、考えることを実践すること。アシスタントとして作業を指示された場合、その技術を行う理由を考えて仕上がりをイメージすることが大切です。そのように考えながら仕事をした人とそうでない人とを比べると、1年後に雲泥の差が生まれます。デビューをしても売れない人はそこに原因があり、サロンではそれを実践できる環境を作るべきでしょう。最後に3つ目は、責任を持ってお客さまの毎日をきれいにすること。サロンできれいになるのは当たり前で、重要なのは次回に来店されるまで美しさを保てるかどうかです。そのために、どのヘアケア剤をどのようなタイミングで使っていただくかをアドバイスすることが大切です。それがサロンの力であり、お客さまから信頼を得るポイントだと思います。
「やっぱりあなたが一番いい」という言葉に幸せを感じて
東京スカイツリーの開場と同時に移転オープンしたLe Clic AVEDA SKYTREEは、観光客にも対応できる複合型サロンとして展開しています。東京ソラマチは観光客用の店舗ばかりでなく、デイリーなお店も出店しているので地元の方が頻繁に来場されています。当然、私たちも今までのお得意さまをお迎えし、さらに1度きりのお客さまに対してもまた来店したくなる、周りにオススメしたくなるサービスを提供しています。Le Clicは各店舗ごとにサロンコンセプトを変えていますが、基本的な技術やお客さまに対する熱意だけは変わりません。最後に、この業界で頑張っている若い人たちに対して、美容師はお客さまに感謝される数少ない職業だということを認識してほしいですね。「やっぱりあなたが一番いい」という言葉に幸せを感じますから。どんな仕事も厳しいですが、他では味わえない喜びを感じながら頑張ってください。
Le Clic代表。東京都出身。東京マックス美容学校卒業。SHIMA美容室に入社後、店長を経てディレクターに就任。サロンワークを中心に全国各地で講習活動を行う。約10年間勤務した後に独立し1987年にLe Clicを押上にオープン。現在は、Le Clic GINZA、Le Clic AVEDA、FRANCK PROVOST GINZA、ALPHA Clic、ESPACE by Le Clicを展開し、2012年には東京ソラマチにLe Clic AVEDA SKYTREEをオープン。女性専用のサロンなど、各店舗ごとで来店客や立地環境に適合したサロンコンセプトを掲げながら高品質の美を提供。2005年には第27代全国美容週間実行委員長を務めるなど、業界内でさまざまな活動をしている。
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